豊胸術のご相談をされる方多くは手術を安易に考えすぎており、もう少し慎重にお考えになってから決めるようにお勧めしています。
以下のような利点欠点を良く知っておきましょう。
手術による豊胸術の中で脂肪注入による方法もありますが、以下の理由で当院では行っておりません。
理由1.注入した脂肪はある程度吸収されるため、また、大量の脂肪を健常部分から採取するのが難しいため満足の行く大きさの確保が難しい。
理由2.移植脂肪が堅くなったり、壊死したりする危険性も大きい。
理由3.形の良い乳房を形成するのが難しい。
以上から手術法はプロテーゼの挿入法に限定しています。
さて、プロテーゼの種類ですが、生理食塩水バッグ、シリコンジェルバッグ、コヒシブシリコンバッグの3つに大きく別れます。 それぞれに利点欠点があります。
生理食塩水バッグの大きな利点は万が一破損しても中身が食塩水であるため安全性がきわめて高い点にあります。 しかし、感触の面から見るとシリコン系のバッグに比べると大きく差が付きます。
シリコンジェルバッグは最も一般的に使用されている材料であり、安全性、感触ともに優れたものです。外皮は固体のシリコンでできており、これが悪影響を及ぼすことはない(生理食塩水バッグも同様です)のですが、万が一破損した場合にはそのままにはしておかず取り出しまたは入れ替えが必要です。もちろん、生理食塩水バッグであっても破損した場合には入れ替えが必要なことは言うまでもありません。
ただ、長期間見るとシリコンジェルがしみ出したりするケースもあり、定期的な検診は必要でしょう。
コヒシブシリコンは破損しても中身が出にくいグミ状のシリコンの入ったバッグです。高価なのが難点です。
次に切開の場所です。
一般にわき、乳房下縁、乳輪の3カ所と言われています。
わきからの切開の利点は、もちろん傷跡が目立ちにくい点です。ただし、術後の痛みが強いなどの欠点もあります。
ノースリーブの場合などはわきの切開も見えないということはありません。
乳房下縁切開はブラのラインに隠れる部分ではありますが、自分で見える部分のため、やや抵抗があるかもしれません。 しかし、術後の痛みが少ないことや、トラブルに対する処置が容易なことなどの利点も数多くあります。
次は大きさです。
プロテーゼは各種の大きさがあり自由に選べますが、やはり不自然な感じが出ない程度の大きさが良いかと思います。現在全国の施設での使用した豊胸術のバッグの平均の大きさは200cc程度と言われていますが、私のクリニックでは平均はもう少し小さく、150cc程度です。地域によっても多少の差があるのかもしれません。
術後3日〜7日にかけて起こるトラブルには感染(化膿)があります。いかに完全に滅菌された器具を使用しても微量の空中の落下細菌は防げません。通常そのような微量の細菌で感染症を起こすことはありませんが、何かの条件が揃うと、そのような可能性がないとは言い切れません。このトラブルを予防するために、術中、術後に抗生物質の点滴、内服を行います。
術後7日〜14日にかけて起こるトラブルにバッグの移動があります。
これも実際には殆ど起こらないものではありますが、術後の安静が十分保たれなかった場合などは上方にずれる事があると言われています。このトラブルの予防のため、バッグはすべてテクスチャータイプという表面がざらざらのものを用います。また、術後は上から下に押さえるようなガーゼをあてて防止します。
術後数ヶ月〜数年で起こってくるトラブルにカプセル拘縮があります。
バッグは基本的に異物ですので生体はこれを隔絶しようと周りに強固なカプセルと呼ばれる膜を作ります。このカプセルが何らかの原因で収縮してゆくことがあります。表面積を最小にするように収縮しますので、作成した乳房が丸くボールのような形に変形してきます。このようなトラブルを予防するため術後のマッサージが欠かせません。術後1週間目から開始します。
形、大きさに関するトラブル
手術そのものはうまくいっても形や大きさ、感触などが考えていたとおりではなかったというトラブルもあり得ます。
神様が作ったものではありませんので、冒頭でも書きましたように完全なものは求めようもありません。 術前に執刀医と十分話し合い、納得の行くまで説明を受け、決定するように致しましょう。
また大きさについては局所麻酔の場合は術中に確認することも可能ですが、全身麻酔の場合や、局所麻酔の場合でも手術の緊張の中で 適切な判断が出来ない場合もありますので、事前に十分検討しておくのが良いでしょう。
さて、条件が整えば手術となりますが、当院では手術の1週間前に術前検査を実施します。問い運では硬膜外麻酔と全身麻酔を併用して手術を致しますので、麻酔に対する安全性を確保する意味でもこの検査は必要です。検査項目は心電図、胸部レントゲン、血液検査一般、尿検査、呼吸機能検査です。これによって術前に異状がないかどうかをチェックし、万全の体制で手術に臨みます。
手術前日の夕方からは絶飲食となります。当日は朝からお出で頂いて診察および乳房のデザインを行います。 その後麻酔科医(指導医)が麻酔をかけます。
手術そのものは両方で30分程度で終了します。しかし、麻酔が完全に覚めて歩いてお帰りになれるまで十分な時間、クリニックで安静を保ちます。 もちろん、この間、術後すぐに起こるかもしれない血腫などがないかどうか観察も行っています。
また良くある質問に術後レントゲンに写るか、また健康診断などで異状ありという結果が出ないかと言うのがあります。結論から言うと心配ありません。通常肺などを写す条件設定では一般にわかるような影は映りません。異状ありの診断も下されないでしょう。ただ、診断する医師はレントゲンも専門家ですので、わかることもありますが(わからなければ専門家とは言えません)、異状ではないので、報告書には記載されません。
まだ研究段階ではありますが、吸引した脂肪組織から幹細胞を取り出し、移植することによって乳房を大きくしようとする方法が研究中です。
乳房縮小、固定術
欧米では一般的な手術ですが、日本では豊胸術ほどは多くない手術です。
しかし、若い頃大きかった乳房が年を取るにつれ、または授乳をきっかけに下垂し、何とかしたいというご相談も増えています。
この手術は豊胸術に比較しても格段に煩雑で、どうしても乳房そのものに傷をつけるのを避けられません。縮小の度合いが少ない場合は乳輪のみの切開から乳腺、脂肪等を切除するだけですむ事もありますが、殆どの場合、乳房下溝と乳輪、6時方向に縦の切開線が入ることが多いです。つまり、逆T字型に傷跡を残す事になります。もちろん、形成外科的に縫合しますし、下着の中には隠れる場所ですので、それほど目立つ訳ではありません。
豊胸術に準じた術前検査、麻酔を行います。
陥没乳頭
陥没乳頭はそれ自体は何も害ではありませんが、不潔になりやすく乳管炎などの原因となることも多いため手術しておくに越したことはないでしょう。 多少の刺激で陥没が改善する場合は矯正器具で治癒する場合もありますが、多くは手術を要します。
手術は局所麻酔で可能、入院もいりません。陥没が高度な場合や乳管の温存の必要がある場合(将来授乳する)は後戻り(また陥没する)の 可能性もありますので、術後は十分なケアを必要とします。
乳房再建
日本人の乳がんの罹患率は年々増加し、また低年齢化してゆく傾向にもあります。手術で乳房を失ったときの精神的苦痛や喪失感は想像にあまりあるものです。私も一般外科や形成外科を通して数多くの乳がんの手術をし、また再建もしてきましたが形だけとはいえ、乳房を再建するのは大きな大きな意味があると思っています。
失った乳房の再建方法にはいろりろな方法がありますが、最も侵襲(手術によるマイナス)が少なく、かつ早期に社会復帰が早い方法として、 組織拡張器による方法があります。この方法は3段階の手術を要します。
まず、組織拡張器を埋め込む手術です。
組織拡張器というのは風船のようなもので、この装置を胸の皮膚(大胸筋)の下に埋め込み、数ヶ月かけて徐々に皮膚をのばします。手術によって乳腺や脂肪、皮膚まで失い足らなくなっている訳ですので、まず健常側にあわせて皮膚を引き延ばす必要があるのです。さらにこの組織拡張器を取り出し、プロテーゼに入れ替える手術、最後に乳輪乳頭を作成する手術の3段階となるわけです。
最も新しい方法としては、この手術の発展型として、組織拡張器そのものがプロテーゼになっており、拡張器の埋め込みと 乳輪乳頭形成の2段階で終了する術式もあります。
乳輪乳頭縮小
授乳後の乳輪や乳頭が大きくなり、この修正を希望する方のための手術です。 乳輪は周りをドーナツ状に切除して縫い縮める方法、乳頭は乳首の尖端を残して減量する方法をとります。
いずれも局所麻酔の手術で1時間程度で終わります。